3年目の試験・裏側
ベテランファイターのセバスチャンは、同志「T.K」と試験を初めて一緒に受けることとなった。
T.Kといえば、いつも試験会場までたどり着けない「怪物級の運の持ち主」である。
他人のための生きるこの漢は、他人からの頼みを断れないため、試験当日に誰かからお願いされたりすると、試験を捨てて人に尽くす。昨年も祭りの応援を急きょ頼まれ、試験に間に合わなかった。ちなみにだが受験料その他の経費はどぶへ投げ捨てている。
そんな彼が初めて試験前日にきちんと、姿を現した。ただ、本人は「喘息の持病」があったため、このコロナウィルス感染症の中、怯えながら試験会場へきていた。ある意味では「そういう理由」だから、今回は試験会場へたどり着けたのかもしれない・・・
T.K
セバスちゃん・・・コロナ怖いよ。大丈夫かな。福岡。コロナ多いじゃん。大丈夫なん?
セバスちゃん
ちゃんと対策してきてるでしょ!それに今回は公共の乗り物じゃなく自家用車で近くのホテルまでこれたし、心配しないでいいよ。とにかく試験に集中しよう!
私たちは福岡工業大学の近くのAZに宿泊し、当日は歩いて試験会場へ行くこととした。歩いて15分くらいの場所であり、ちょうどよい距離である。駅前のコンビニで軽食を買い、いざ試験会場へ。
会話をしながら進む。
・・・セバスちゃん、中小企業診断士を受験する皆って顔つき違うよね。
そうだよ。みんな何かをかけてここに来てるからね。俺なんか今年で3年目よ(笑)
そうだよね。見るからに、「ベテラン猛者(もさ)」っぽい人いっぱいいるよね。
例えば!あの人!
そこには体格の良い40代後半くらいのリュックサックをからった、見るからに目つきの鋭い「ベテラン猛者」が歩いていた。
・・・確かに、あのオーラは半端ないね。たぶん、ベテラン中のベテランかもね。
とふとベテラン猛者が右手に何かパンフレットを持っていることに気付く。
・・・T.K。ごめん。俺を惑わすのやめて。
どゆこと?
だって、あの人右手に
TACの通信講座のパンフレットもってるじゃーーーん
(そこ~)
あのね、すでに試験開始前から諦めてるよ(笑)やめてもらっていい?雰囲気だけで「ベテラン猛者」とかネーミングつけるの(笑)?
次に明らかに10代だろうか?さっそうと爽やかに若者が横切る。
・・・セバスちゃん。あの年齢で中小企業診断士受ける人間って、天才だよね。
いるんよー。世の中には俺らの想像じゃ収まらない人間がね。
と次の瞬間試験会場方向ではなく、左手の体育館へ入る。
(そっちぃ~)
・・・あのさ、もういいかげんにしてもらっていい(笑)?
あんたさ、ビビりすぎなんよ(笑)
ごめん、セバスちゃん(笑)
こんな中二みたいなくだらない話をしながら、40代のおっさん2人は会場看板を発見。
いよいよだね。俺はここで極める!ある意味1次試験は今年が集大成にしたい。
そうだね。3年間本当に勉強してたもんね。お互い頑張ろう!
私たちは試験の棟が異なっていた。ちなみに私の受験番号は40番台。T.Kはもっと後の番号だった。
・・・ベテランになると番号も若番になるんかなぁ?確かに、1年目は3桁番号、2年目は80番代、今年は40番代、それ以上のベテラン猛者って何番代なん(笑)?
今回の試験入り口は非常にガードが固く、体温検査が一人ひとり実施された。ここで熱があった人は試験さえ受けることはできない。合格科目は来年に持ち越せる特例があるとはいえ、人生の時間は進む。今回は本当に体調管理に気を付けた。準備は万端である。体温OK。よかったぁ。
それから試験会場教室へ。今回は凄くゆとりのある席となっており、かなり机も広く使える場所だった。
(ある意味ラッキー。机が狭いと計算問題とかしにくいから。)
ふと、教室の端をみるととんでもなく矮小な席に左右座っている受験生たち発見
(・・・これも運?あの狭さ、いかーんよ、試験プリントだけでぎりぎりやん(笑))
それから間もなくして試験官が来る。私は広々とした机の真ん中に座っていた。なぜなら、左右で物を置けるからと考えたからだ。廊下の試験官にあえて、「席の座り方は真ん中の方が隣と距離があっていいんじゃないか?」と提案。OKOK。みんな真ん中へ(笑)これで試験の態勢はばっちりである。
試験が開始する前、どんなベテラン猛者がいるのか、周りを見回してみる。すると・・・2、3人くらいだろうか、「ジャージ受験生で髪ぼさぼさ」が結構いる。マスクをしているからわからないけど、髭もはやしっぱなしかなぁ。
(この人たちはなんだろうな?ベテランなんだろうね。俺なんか髪もばっちりワックスで極めてきたんだけど、試験完全特化型やね(笑)・・・ん?)
私はある人物が目に入る。
いやいやいやいや・・・嘘でしょ!
あの人・・・ジャージどころか
どう考えても
寝まきじゃーん
どゆこと?もはやベテランすぎて、「試験が日常の空気を吸うレベル感」ってこと。もはやそれって神の領域じゃん(笑)
他にも目を向けてみる。
・・・ん?
そこには「スポーツマスク」を付けた受験生。
いやいや、いくらコロナでもそりゃいかんでしょ!
なんなんよこのベテラン珍集団。
案の定
試験官から注意
でもね(笑)
「すいません・・・これしかないんです」
(そこぉ~)
試験を優位に進めたい気持ちはわかるよ
でも常識よ常識
結局そのベテランは認められました(笑)
てかね試験を優位に進めたいのはお互い
でもね、そこはいかんよ(笑)
と、その時明らかに60代の偉そうなおっさんが
「すいませーん!試験中もずっとマスクしないとだめ?」
(そこ~)
試験官ドン引きしてるじゃん
あのね、あんたが会社の重役か知らんけどさ
ここは平等の世界
いくらベテランでも、もっちと考えよ
あんたの世界はその程度って思われるよ(笑)
ここはある意味イノセントワールド
あんたの役職うんぬんじゃないんよ
そしてそんな珍事件の末、試験開始
15分くらい経ったくらいだろうか
ガタン!斜め前に遅刻のベテラン出現
どう見ても汗だく
「はぁはぁ間に合ったぁ~」
あのね、ごめんなさい
気が散るからさ声出すのやめて
それに15分ってそもそも命取りよ
それからそのベテラン
・・・
大きなため息と何回もする
「えーくそぉ~えー」
ごめん。お前帰れ!声漏れまくりなんよ
(しばくぞ)
ちなみにだけどね。財務会計が難化したのかもしれんけど
後ろの「かりゆし姿の奴」といい、ため息はいかんよ
だいたいなんで、かりゆしなんよ(笑)
気が散る
やりこみ度が足りん(笑)
なんなんこのカオス教室
でも大丈夫よ。
そんな訳のわからんことも全て計算通り
それから、なぜか試験官が私の横に来て
立ち止まる
ん?なんかした?
カンニングなんかしなよ
そして付箋紙に書き込み机に貼り付けられる
「バックを下に置いてください」
(ごめーーーん)
皆のことこと、さんざッぱら言ったけど
席の隣にリュック置きぱなし
そーりーそーりー(笑)
ベテラン集団ってある意味さ
ミスフィッツ集団なん(笑)?
そして2日目
この日の試験は特に事件はおきず
・・・
T.Kと試験終了後落ち合う
試験どうだった?
うーん。運営管理が難しかったかなぁ
そうだよね。去年もそうだったけど最近難化してるよね
などなど
2人で歩きながら会話をしていると
駅構内に入ったくらいだろうか
解答速報を配布しているため一部もらう
1日目は分かっている感じか
私は帰り道のケーキ屋さんで職員への土産を購入し
足早に車で帰宅をする
明日は休みにしたし、採点しようかなぁ
でも、今回は結構自信あるしなぁ
なんか速報でてないかなぁ
そして私は自宅に帰宅するとすぐに
ネット検索で速報を発見
○E○という会社が最速動画で解答速報をあげている
ここ凄いね。さっきまで試験だったのに
私は何度も言うが自信があり
珍会場でも冷静を保てたことから
この3年間苦しめられた
経営法務の解答速報動画を見ることにした
問1 ん?あれいきなり間違いか。結構自信あったんだけど
問3・問5・問7・問8・問10 間違いの動画解答
・・・いやいや嘘よね。これって、ここの領域でこんな間違うの?
1年目・2年目のいや~な記憶が思い出され、ドキドキと動悸が激しくなる。
問11・問12・問14・問15 間違い
この時点で頭が真っ白になる。・・・。言葉もでない。
問16・17・・・・・
きぃ~
もはや解答動画をみるどころか、恥ずかしい話、涙があふれてくる
おれの3年間って結局こんなもんだったのか・・・
正直、他の科目を採点する心の余裕もなく、家族が異変を察知し、無言。
私はT.Kに連絡する
どうした?セバスチャン?・・・大丈夫?
・・・T.K。ごめん。俺さ、もう諦めるわ。中小企業診断士。
は?どゆこと?何があったの?
さっき、〇E〇っていう会社の解答動画速報で経営法務採点したら足切り確実だった
え?嘘でしょ!自信あるって言ってたじゃん。足切り?いやいや本当に?
・・・うん
ごめん、セバスチャン、言葉が見つからない。この3年間の姿を知っているから。なおさら・・・
T.K・・・ここが俺の限界みたい。やっぱり凡人が変わるには無理があったんよ。やめるわ。
・・・
(いつものT.Kなら、ふざけるなって叱ってくれるのだろうが、さすがに3年目の努力の末、行き着いた結果が足切りという結果に、さすがに終始無言となった)
私はその日ふさぎこみ、今まで我慢してたこともあり大量の酒を浴びるほど飲む。
家族も私がかつてないほどの「ブラックゾーン」に入ったことを察して距離を取る始末。
(・・・死にたいくらいに辛い)
私はその日ほとんど眠ることができず、朝から空を見て、ぼぉーっとしていた。
この辛かった10年を思い起こす。
・・・まだ、諦めてはいけない!!
私は立ち上がり、来年からは「7科目受験」に切り替えることを決心。年間の勉強スケジュールを立て、足腰からしっかり鍛えなおすプランを作成。
それから、メルカリを見ていると最新の「過去問マスターが全科目販売してあった」ので迷わず購入。ほぼ定価に近かったが、私はそんなことも関係なく行動を起こす。
やるぞ。一からでなおしだ。倒れても倒れても、やり続けよう。
午後にはスケジュールも固まり、次への始動体制も構築。
・・・来年のために、辛いけど、中小企業診断士協会の解答速報を見て、間違ったところを確認しよう。
財務会計採点:想像通り(合格)
中小企業経営政策:高得点(合格)
この2科目を先に採点。これらが出来が良かった分、また心が苦しくなる。
最後に経営法務を採点開始
問5にさしかかったとき
・・・ん?あれ?
私は何度も解答記号を見直す。それから、その解答が令和2年度になっているかを3回くらいアクセスしなおしてチェックする。
これで間違いないけど?あれ、問5あってるよ。昨日の動画解答じゃ間違ってたので。
私の心臓の鼓動が激しくなる。
そして問8・問10・・・・
結果は64点・・・ちなみに前日の動画による点数36点
怒りと嬉しさという今まで味わったことのない気持ち炸裂
何度何度も採点しても
64点
ごうかくぅ~
私は本当に気が抜けた家の床に仰向けで停止。気を失った(眠った)。
家族から「大丈夫!」と起こされ、内容を報告。「おめでとうって言いたいけど・・・昨日のアノ状態はこっちまでめちゃくちゃストレスでした。家に帰りたくなかったもん」という素直な言葉に謝罪。家族まで不幸にしていたことに気付く。
それからT.Kへ連絡。
合格したよ
え!どういうこと?
それがさ、正式な解答で採点したらオールクリアだった。昨日の動画速報の間違いがめちゃくちゃあったみたい。まじで、訴えるレベルよ。
・・・セバスチャン、謝れ(笑)昨日、お前なんつった?
何が?
もう諦めるって言ったでしょうが!こっちも傷ついたよ、コラ!
本当にごめんなさい。にしても〇E〇って会社、まじでいかーーーんよ。これさ、昨日この解答信じてた人間はさ、下手すると、過ちを冒してるかもよ(笑)人生変えるくらいの間違いを配信するのやめて。これって、もはや「殺人教唆レベル」よ。
それから、なぜかT.Kが泣いている。
どしたの?
いやいや、セバスチャンが頑張ってるのしってたから、なんかこっちも嬉しくってさ。
(なんて、いいやつなんだ。)
ありがとう。それがさ、俺焦ってさ、過去問マスター最新の全部買っちゃったよ(笑)
どうすんのよこれ?嫁に怒られるよ。衝動買い(笑)
そっか。ならオレが買うよ。2次試験は今年と落ちても来年までチャンスあるんだろ?
そうね。なら世話にもなってるけん、1万でいいよ。
ありがとう。あと、まずはおめでとう。次の2次も頑張って。
お互い頑張ろう!
・・・これが3年目の裏話です(笑)にしても、毎年毎年、なんかあるよね。
いいかげんにしましょう!
あと解答速報は見るな(笑)